Diary
沖縄滞在日記

台風から始まった那覇 7/9-13

記:水野立子

7/9
宮古島に台風到来の日。10時代の便が2名・水野とノーラ、12時の便が2名・山城さんとアキくん、と2便に分かれてしまったが、それでも必死になってゲットした航空券。なんとか飛行機が欠航になる前に那覇に脱出したいと願い空港に向かう。午後からは欠航になっているが、12時までの便は飛んでいる模様。ヤッター!と思い荷物を預けている最中にガーン!12時の便が欠航に。。。これに乗れないとなると山城・アキはいつ那覇に帰れるか怪しくなる。11日夜までは宮古で足止めになる可能性大。ともかく10時の便にキャンセル待ち103番と聞き、ほぼ絶望と思いきや、奇跡的に乗れたーーー!!なんという幸運。那覇に着きホテルに缶詰めに。TVでは宮古島の中継がずっと流れている。

7/11

昨日まで丸2日ホテルの缶詰めで、ノーラもかなりストレスを感じている模様。ようやく活動開始できる。
今日は沖縄県立美術館のアトリエで、琉球舞踊のレクチャーの日だ。知花小百合さんと、神谷武史さんに講師をお願いした。お二人は琉球舞踊を継承していくために、どのようなアプローチが必要なのか、試行錯誤をしつつ取り組んでいる琉舞の実演家だ。

琉球舞踊の歴史の説明から、メイク方法、王宮舞踊の女性の代表的な舞踊、老人踊りの祝義舞踊、ゆったりとした王宮舞踊になじめなかった民衆の素足で踊る軽快な舞踊、など駆け足でレクチャーと実技で紹介してくれた。ノーラが興味を示した老人の踊りの基本の部分を習う。基本の姿勢や歩きは、能・狂言のすり足に通ずる腰を落とし、かかとから体重移動する歩き方。西洋の踊りしか体に入っていない人は、なかなか習得できないが、ノーラのダンスの基本は腰を落とし重心を低くし、地面と接する踊りなので、驚くほど琉舞の基本を呑み込める。

レクチャー終了後、伝統を継承していくためには、新しい何かを足していかないと伝統は継続できなくなってしまうのではないか、という、どの国の伝統芸能でも同様に保存と継承についての課題があることを話し合った。ノーラというコンテンポラリー同時代のダンスをつくり出すアーティストと、琉球舞踊の未来を引き受ける実演家の課題がクロスする。

終了後、ダンサーの垣尾優、佐藤健大郎が那覇入りし合流した。沖縄県立博物館・美術館の副館長である前田さんに、博物館と美術館を案内してもらった。博物館では、「洗骨」という亡くなった人の死体を浜辺の近くに放置し、虫や自然の風化にまかせ数十年後、その先祖の骨を洗い納める。この骨を洗うのは酒。そのため、各地に自生の酒・アルコール度の高い泡盛をつくったという理由があるそうだ。なるほど、沖縄の泡盛の起源はそういうことだったのか。
その後、美術館に移動。戦後70年特別企画ニシムイ 展 ― 太陽のキャンバス ― を前田さんの案内でみる。

戦後の荒れた地に、なんとか美術の復興をめざし画家たちがニシムイという美術村をつくりだした。経済的に集団的に工夫をしつつ、生活の基盤をみつけつつ沖縄の美術を生き残らせようとした試みは、現代の私たちにもヒントをくれる。沖縄とアメリカが単に主従の関係だけではなく、そこには沖縄の人の交渉が成立したかけひきの述が成立していたということ。前田さん曰く「アメリカ相手には、かけひきの交渉が成立するが、日本のはそれが機能しないんだ」今の沖縄問題と政府の関係のようだ。

7/12
ダンサーの二人が那覇入りしたこともあり、稽古をしたいというノーラ。ワークショップを行う日、宜野湾にある知花幸美さんのダンススタジオを午前から借りることができ使用させてもらった。宮古でノーラが体験したことを二人のダンサーに伝え共有する時間を持ちながら制作に向かう。宮古でのクイチャー、琉球舞踊のセンテンスをベースにイメージを膨らませ動きを掘り起こしていく作業。
午後からワークショップ参加者20名と汗を流す。腰、背中、重心を落とすことの習得。

7/13

国際沖縄小林流聖武館空手道協会・島袋先生に指導を受けた。55年経っているという木造の趣のある道場を訪れた。窓からみえる緑が美しく床は磨きぬかれ足腰に優しい。ノーラはアキ君から借りた黒帯の柔道着でレッスンを受けた。ノーラは型をすぐにマスターしてさまになる。先生は流暢な英語で説明する。73歳の年齢はどこへやら、鍛え抜かれた脅威の体。
沖縄空手の役割の説明を前田アキ君から聞いた。主に男子は子どもから始め、大人になってもライフワークのように道場に通うそうだ。地域の子どもから青年までが道場に育てられ、支えられる役割を担っているようだ。学校と家庭と道場=地域で子どもの成長を見守る、成人後は精神的な支えになるという、都会では失われてしまったコミュニティの役割がある。なので月謝を払って習うソロバンやピアノのお稽古事とは違う存在。

沖縄空手は、観ていて美しい型だ、そしておそらく本当に戦ったら強いのだろう。対してオリンピックなどでやっている極真空手は、スポーツ空手と呼ばれ別物となっているようだ。体の大小にかかわらず鍛え抜かれた鍛錬が沖縄空手の神髄。
島袋親子の先生が見本をみせてくれる型が、これまた目に見えないほど速く力強い。ここでも中心は腰。腕の強さではなく腰に体重を乗せること。ダンスも武術も腰・胴ですな。

知花さんのスタジオに戻りリハーサル。早速空手で学んだ型をダンスにしていく。沖縄で出会った芸能、神事、民族芸能、沖縄が祈りの島であることを体感しつつ現代の祈りとは何かを見つけていく。

宮古・那覇での滞在は、ノーラが沖縄をインプットする時間として第1部が終了し、明日から伊江島に向い本格的な滞在制作が開始する。

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