Diary
沖縄滞在日記

備瀬の5日間。7/21-25


(23日にワルミで行った撮影風景)

記:水野立子

7/21

 伊江島での第1期制作期間を経て、対岸の備瀬に4日間の予定で向かう。ShinBowさんの住む新里は隣町。下見に来た時はシーズンオフで、誰もいなかった備瀬の海。その美しさは格別だった。今日は沖縄に来て始めてのOFFの日を楽しもうと思う。ボイスの真美さんも今日から沖縄入りする。本日の宿となるのは、24日に「アフリカの風、琉球の風、ビセザキの夕べ」の開催会場となるペンションビセザキ。何よりもマスターの格別のおいしい料理にありつけることが楽しみ。

 ペンションに着くとShinBowさんが、ノーラの好物のマンゴを手みやげに登場。庭先には24日のための舞台が既に設えてあり、ペンションビセザキのマスターの熊さんと、ShinBowさんとで作りあげてくれたそうだ。古い船の置物を後ろに動かして、アクティングエリアを広くするという大変な作業を終えたそうだ。感謝感謝。
今日のOFF日をどう楽しもうか。まずは、ペンションビセザキのプライベートビーチに繰り出し透明の海へ。そこから遠浅の海を歩いてワルミへ。23日に撮影する予定のスゴイとしかいいようのない、自然に畏敬の念を抱く場所だ。SinBowさんからワルミの岩の悲しい話を聞く。ワルミ、何度来てもすごすぎる場所だ。岩と空と海がひとつになるところ。私は今、何処にいるのだろう。日本の中の何処かなのか、外国なのか、ホンノ半月前まで京都で生活していた日常が遠くに思える。

 マスターのエンタテーメントのすしバーのおもてなしに、心もお腹も完全に満足したゴージャスな夕食。夕食後は、24日のためにマスターが棒術の稽古を庭で始めた。本部の皆さんの芸能はどんなものだろう。すこぶる楽しみだ。此処には、夜になると涼しい風が吹き、見たこともないような巨大なヤドカリがごぞごそと浜から庭にやってくる。ShinBowさんは、三線を弾き歌いだす。贅沢な夜が更けてゆく。

7/22
舞台テクニカルのまとめ役として、桑折くんが沖縄入りした。3日間ほど那覇にもどっていた映像の大城さんと、砂川さんも今日から備瀬に。これで最後までのフルメンバーがそろったわけだ。
今日は、ボイスまみさん、音楽ShinBowさんが参加して、作品の全メンバーの初顔合わせの日となる。1軒家の「結」にダンサーが移り、そのすぐ隣の備瀬区民会館が練習する場所となる。冷房なしの公民館。バリ島を思わせるような埃だらけのホールを掃除する。暑い、けど、やる。明日はワルミでの撮影。映像班と撮影プランの打ち合わせ、衣裳合わせを大汗をかいて行った。

7/23

今日はワルミでの撮影。4月にShinBowさんに「見せたいところがある」と言われついて行った先に現れた、急に開けた目の前の景色に圧倒された。岩と海と空がなんとも言えないせめぎ合いで存在を際立出せている。神が降りる場だとも言われ、地元の人から畏敬の念を持たれているところ。ShinBowさんが子どもの頃から比べると、地面が3メートルほどあがってきているようだ。珊瑚がそれだけ死滅してしまったということ。あとどれくらいこの景色が此処に存在できるのだろうか?そんなこともあり、ノーラのダンスと、ワルミとシンボウさんを映像に残したいということになった。

映像の山城さん、砂川さんの撮影プランの元、4テイクを撮影。陽が当たっているところ以外は、日蔭になって涼しいくらいだ。パフォーマンスが始まると、この世のものとは思えない風景となった。ワルミの中に妖精だか、妖怪だかが舞う。
ShinBowさんが歌い始めると、ワルミの隣に住んでいたおじいが、降りてきたそうだ。本部特有の言葉で何やら語り始めたSinBowさん、おじいが語るこの辺の昔の話し。SinBowさんが子どものころ、そのおじいに、「釣りがんばりやー」と言われていたそうだ。そしたら目の前に子どもが釣りをしに通りかかった、と。

7/24

(photo:山城知佳子)

今日は地元の人も「暑い」というため息が出るほど、危機感を感じる暑さ。沖縄の太陽が地面を焦がす。今日は備瀬の最後の日、「アフリカの風、琉球の風、ビセザキの夕べ」をペンションビセザキで開催する日。今日のイベントのため、地元の力がゆるやかに集結する。弁当の買いだし、照明機材の手配、音響のセッティング、などなど。ここは沖縄。故に数か月前からの準備はせず、どちらかというと当日勝負の沖縄時間。想像以上に当日マターが多く、焦りつつ準備をする。それでもチーちゃんという力強いマネージメント力を持ってして、段取りが決められ、司会原稿が書きあげられ、出演順のスケジュールが決められて行く。その段取りをShinBowさんの緩やかさのパワーが、今日の暑さも加担してか溶かしていってしまう。車のクーラーが効く前に乗り込む気温はいったい何度やら!それを何度か繰り返し移動し、会場入りした時は既に熱中症の一歩手前まできていた。

 「今日は外に出る気温じゃないよ。ましてや沖縄の人は12時から16時まで外にいないさ。」と言われたが、影がまったくないカンカン照りの野外舞台の仕込をせざる得ない。上半身裸でがんばる男性の皆さん。私は気持ちが悪くなる熱中症入口でぼけーっとしていた。氷のタオルで頭を冷やしなんとかしのぐ。桑折くんが照明の仕込をShinBowさんとこなしていく。出演者や、ダンサーの場当たりが終わり、早めの夕食をとりスタンバイする。
不思議なもので夕陽が沈むと日中の凶器の暑さはどこへやら。風が吹く。これがビセザキの風。この季節、内地では野外公演なんて暑くてできたものじゃないが、日没後の沖縄では可能。

 そろそろかなという夕暮れ時になると、お客さんが三々五々、いい感じで集まってきてくれた。ShinBowさんの構成で、「座開き」の曲は、地元で活動する音楽家たちのジンベの演奏から始まり、三線の演奏に繋がるという趣向。琉球舞踊、棒術、民謡と本部の皆さんの日頃の芸能が披露される。聞けば皆さん、この日のためにひと月ほど稽古を重ねてきた。仲間とおしゃべりし、杯を重ね、賑わっていく客席は、劇場文化に慣れてしまった昨今ではみられない場を楽しむ姿があった。歌舞伎の始まりの頃はこんな感じだったんだろう。
 


(熊さんの娘さん美人姉妹の琉球舞踊)

プログラムが始まると、場を盛り上げるためビセザキの熊さんは欠かせない。料理人から芸達者なエンタテーナーになる。夏休み中、研修に泊まり込みで働いている中学生の男子生徒2名は、客席を回って祝儀を集める係をさせられる。こういう経験は都会でできない修行となり、人間力が鍛えられていくのだろう。これぞ本当のインターンというもの。

 最後の演目は、私たちの出番。「祈り」のこれまでの途中経過を発表。ShinBowさんは、ステージで演奏でも歌でもなく語り始めた。昨日のワルミのときとはどうやら雰囲気が違うようだ。私には理解できない言葉だったが本部弁で。意味がわかる客席からは笑いも起きている。何を話しているんだろう。上演後、ShinBowさんに話を聞いた。「今日、舞台で演奏していて考えたことなんだけどね、このあたりには、昔はブルーベリーがたくさんあった。今はもうなくなってしまった。どうすれば、元のようにベリーが採れるようになるのだろうか。そうだこの舞台上のダンサーたち、この人たちは妖精のような存在だから、彼らにお願いすればどうにかしてくれるんじゃないか、と。だけど、上演が終わる頃には、いや、そうじゃない誰かにお願いするのではなく、自分でどうにかしないといけないんだ、未来は自分で変えていかないといけないんだと気が付いたんだ。」と。
 ShinBowさんがやりたいと思った本部での手作りの芸能祭。自分たちで仕掛けて自分たちで楽しむ、そういう夏の夜にこのプロジェクトが参加できたことは、とてつもなく大きな大きな糧だと思う。
舞台の〆は、もちろん観客の皆さんでカチャーシー。


(photo:山城知佳子)

7/25

さあ、今日から伊江島に戻り、ラストスパートの作品制作だ。と勢い込んだところ。。。。ななーーんと、台風のため伊江島へのフェリーが欠航となってしまった。さあ大変だ、夏休みど真ん中の3連休の土曜日。昨今、超人気スポットここ備瀬の宿がとれるのかー。実は昨日のイベント中も台風情報を聞き宿の確保に奔走していた。が案の定出演者が気に入っている「結」というの一軒家は、次の人が入るしもう絶望的に・・・・。なんとかバラバラながらも人数分の泊まれるところを確保し、今日は思いもかけずOFFとなった。

公民館で昨日の舞台の映像を皆で観た後、ShinBowさんの案内で本部町を案内してもらった。子ども時代を過ごした大きなバオバブのある木、いま住んでいる家の裏にあるシーカーサーの木、魔除けの貝の作品をつくる材料、フクギの染め材料などを見せてくれた。お金で買えない豊かさというのは、こういう生活と時間なのではないか。そういう時を過ごすということ。
その後、今帰仁の入口にある古民家を改造したカフェに寄り、昨日の舞台や沖縄での制作について映像収録のトークを行った。台風のおかげで、ゆったりした時間をプレゼントされたみたいだ。夕食後、夕陽に染まった備瀬の海を見に最後の散歩に。この海は無くならないでほしい。

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